。そんなわけで今日はすこし暇です。
 この家は僕は二度目です。前に一度たずねて來て、それから東京へ歸り、あちこちと東京近くで三四人の女の人と會つて、それから又、一月前に此處へ來ました。百姓青年のカッコウをして、畑や麥などの世話――と言つても、僕は百姓の事はなんにも知らないので、久子さんから命令されるままに手傳つて働らくのです。ビックリなさつたですか? あのゴロツキの、フラフラ男が、默つて百姓仕事をしているんですよ。自分でもビックリします。そしてコッケイになります。現に、これを書きながら僕はさつきから笑つているんです。
「貴島さんのオッさんは、なにを、さつきからゲタゲタ笑つているずらなあ、坊や?」
 向うの土間で坊やを相手に豆をむいている久子さんが、さつき、言いました。

 話は、二三カ月前にさかのぼるわけです。

 僕は徳富稻子に會つて、彼女と夫との關係や、彼等の進歩的思想の内容を覗くと、そのあと實に變な氣持になつてしまつて、いろいろ考えました。しかし、僕などには、それをどう思つてよいか、わからない。あの人たちの生活も戀愛も思想も、一切合切實に愚劣だ。踏みつぶしてしまえと思う。しかし、
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