、あまり少なすぎるのではあるまいか。しかしそんな事は自分に直接の關係無き事ゆえ、すぐに自分がMさんの知人であることを言う。椅子も無く、坐る所も無いので、突つ立つたままなり。
「そう、Mさんね?……もう久しく會わないでいて、あの方あんなことになつたけど――お氣の毒なことをしましたねえ」
 カチッとした物の言い方で、テイネイなれど、冷たい。人をよせつけないような所がある。ひどくイライラしているような眼の色。そのイライラしている自分を他人からかくそうとして壓えつけている。冷たい感じはそのために生れるのか。――
「で、どんな御用でしよう?」
 言われて自分困る。はじめの三四分間、この人があの女で無いとわかつたので、さて「用」と言われるとマゴつくのだ。それで、しかた無く、訪問の口實として立川景子から授かつた「Mさんの事を書きとめて置きたいと思つて、知人の方たちを歴訪しているんです」と言うと、稻子はしばらく考えていたが、やがて腕時計をのぞき「では、私の住居の方へ行きましよう。いえ、どうせ、お午になれば、この子たちは家の方から連れに來ることになつているし、もう十一時半過ぎですから、早目に歸らせましよ
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