ねて行つた時は、正午近くだつたが、アパートには不在のため、隣室の人にたずねると、託兒所だろうという事で、そちらへ行くと、なるほど幼稚園のカンバンはかかつているが、古板や燒けトタンを寄せ集めて立てたヨロヨロのバラックなり。表で自分がウロウロしていると、バラックの内から、甲高い女の聲と三四人の幼い子供たちの聲で、インターナショナルを歌う聲が不意に起る。しかし、チャンと歌になつているのは、ただ一人の女の聲だけで、あとの子供たちは、ただウォーウォーと犬がほえるように、節もメチャメチャに叫ぶだけ。
 案内を乞うていると、窓のような所から、オトナやら子供やらわからぬ女の顏がヌッと突き出て、「どなた?」と言う。それが徳富稻子であつた。内に入ると、二間四方ぐらいのきたない板の間で、家具は無く、壁に小さい黒板を一つぶらさげただけ。黒板に多分熊だろう――動物の繪がチョウクで描いてある。四歳から七歳ぐらいまでの、みすぼらしいナリと顏をした子供が、たつた四人いるだけ。それに稻子はインターナショナルを教えていたらしい。自分は託兒所というものを、はじめて見たが、こんな貧弱な託兒所が有るのか? 兒童が四人というのも
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