有るようだし、氣がかりでもあるしするので、さしあたり自分だけで今日にでも貴島勉に會つて見よう、という氣に、なつていたのであつた。
「わかりました。……少しばかり心當りが無いこともありません。問合せてみましよう。何かわかりましたらお知らせします」
「そうお願いできると實にありがたいと存じます。なんとも、どうも、とんだ御迷惑さまですが……母親など心痛のあまり寢ついたりしてしまいまして――」
「……そいで、ルリさん――いや、芙佐子さんの御親戚……何かの場合に一時身を寄せると言つたようなお家は、東京に?」
「はあ、二軒ばかり親戚は有るには有ります。しかし、いずれも……御存じの通り、こんなことになりまして、……もと京都から來た貧乏華族の家でして、それだけに又融通が利かないと言いますか、今度のなん[#「なん」に傍点]では實際よりも以上に、この、こたえるんですなあ。もうスッカリ動てんしていまして、もう、たとえ、親類同志の間でも、他家のことなどを構つているユトリはありませんで、はあ。それに、いまだに格式と言つたような事にこだわつておりまして、この、芙佐子が女優になつた事なども、一門の恥じ……まあ、そう
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