くなつて來ました。そして、この人は寂しいのだと思いました。そう思うと、これは俺の搜している女では無いから、もう用は無いのだと思つても、そのままサッサと歸れなくなつてしまつたのです。
「男なんてダメ。あたしみたいな女は、結局は男なんかでは滿足しておれないのね。こいで、今まで三人も四人も亭主みたいな者を持つたことがあるのよ。だけど、みんな永續きがしない。そう、男運が惡いことも惡いんだわね」
 いつの間にか、景子はそんな事を言つています。「だけどね、そんな事よりも人間がいつたん藝術に惚れこんでしまうと……」と言いかけて、フフフ! と自嘲して「いえさ、こんなふうになつてしまつたハダカ女優が藝術なんて言うと口はばつたいけどさ、そんでも、こんな世界に飛びこんだモトモトを言えば、まあ、藝だわね? その藝さ。藝に惚れこんでしまつたら、おしまいなのよ。男なんて言うもんより惡性なのよ藝と言うものは。血まですすられちまう。それだけに、つらいとも樂しいとも一言では言えない味があるのよ。それが有るから、こんなドブドロん中でもオヨオヨしておれるのよ。今どきのチンピラさんたちは知らない。あたしは、そうなの。わかる?
前へ 次へ
全388ページ中282ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング