だ。ホンの昨日まで、あのようにしか見えなかつたものが、チョットした加減で今日は、まるで別のように見える。しかも、昨日の認識は、その人間にとつてはその時は絶對であつて、それしか存在しないし、今日は今日で、これ又今日の認識が全部で絶對だ。變だと思う。人間は弱い。人間はタヨリ無い。しかも、その事を知つていても、又しても明日も明後日も、その時その時の認識を持ち、その一つ一つをその時には絶對であり全部であると思つて生きて行く。頭では知つていることを、實際の上では、愚かにも何度でもくり返して行く。行かなければならない。――それほど人間は浮いている雲のようにとりとめの無いものなのだろうか? いや、えらそうに「人間」などと言うことはない。自分だ。この貴島勉と言う男だ。弱い、モロイ、たよりにならない、浮雲のようにプワプワした者が、この自分なのだろうか?
 そうだ。たしかにそうだ。そう言い切らなければならない。辯解はあり得ない。おれと言う人間は、そんな弱虫の、プワプワした浮雲なんだ。馬鹿! ザマ見ろ!
 しかし、それはそれとしてだ。いや、それがそうであればある程、すると俺には、この世の中、人生、人間、社會
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