僕は馬鹿だ。
 僕は自分のことを、かしこい人間だと思つたことは一度も無い。しかし、これほどの馬鹿だとは思つていなかつた。救われようの無い馬鹿。
 この二三カ月間、あちこちして、いろんな目に逢い、いろんな人間を見て歩いている間に、その事が、實にイヤになるほどハッキリとわかつた。
 自分が戰爭から歸つて來て、黒田組に入つて、ヤクザな生活をしていた一年ばかりと言うもの、それが自分にはわからなかつた。それが、黒田組を出てしまつて、方々をウロつきまわりはじめて、たつた二三カ月で、まるでいつぺんに幕を切つて落したように、ギョッとするほど見えて來た。自分の愚劣さ! どうしてだろう? この二三カ月で世の中が變つたわけでは無い。今、自分の目の前にある現實は一年前から在つたのだ。今、氣の附くことなら、一年前に氣が附かないワケは無い。だのに氣が附かなかつた。
 すると、自分が變つたのだろうか? いや、しかし、自分がそんなに急に變るなんていう事は、あり得ない氣がする。何かチョットした視角の違いが起きたのか、又は視力の中にある盲點のようなものがヒョイと治つたのか? わからない。
 人間なんて實に弱い、モロイもの
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