ています。
 もう僕の腿のキズもほとんどうずきません。二三日中に僕は此處を出立します。その女を搜しに行くのです。ホントに、おかしな、人から見たらキチガイじみた事だろうと思います。それに搜し出せるか出せないかほとんど望みは有りそうにありません。しかし今の僕には、それをする以外に何もする事が無いのです。いつまで、そうして歩くか、たとえ遂に見つからなくても、僕はバカみたいに、あちこちするでしよう。あなたの書いて下さつたリストの十五人の女の中で六人が東京附近で、三人が地方で、あとの六人が住所不明になつています。住所の書いてあるのが九人、その中の六人が東京や東京附近で、三人が地方になつています。住所の書いてない六人はあなたも御存じないのだろうと思います。それらは、さしあたり搜す當てが無いのですが、しかし、住所のわかつている人たちも、戰爭中から戰後へかけてもとの所に居る人は少いと見なければならないでしよう。中には死んだ人もいるだろうと思います。搜すのは容易なことでは無いでしよう。
 しかし僕は先ずこの九人の人たちをハジから搜して見ます。

        32[#「32」は縦中横]

 馬鹿!
 
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