リさんは非常に特色のある強い匂いを持つているんです。若い女はオシロイや香油などの化粧料の匂いのために、似たような匂いの人がウンと居ますが、ルリさんはあまり化粧はしないと見えて、ハッキリとそれがかげるのです。スモモの花の匂いにいくらか似たようなフックリと重い匂いです。それが僕には、イヤで無い匂いでした。と言うよりも、僕には抵抗することのできない匂いでした。そのためです。ルリさんと連れ立つての歸り途で、ルリさんに對して變なことをしてしまつて、ルリさんから憎まれるような事になつてしまつたのは。
しかし僕は、ルリさんに、なんにも惡い事はしていません。今こうしてルリさんを思い出していても、なつかしくこそあれ、ホントの意味でルリさんに對する僕自身のした事について、惡い後味は何一つ無いのです。ルリさんが今後幸福になられることを僕は心から祈つています。
恥かしい事を、思ひ切つて洗いざらい書いてしまいました。すこしホッとしています。これから僕はあなたに對して、やましい氣持無しに手紙が書けます。今日はこれでやめます。
今、外では雨が降りつづいています。靜かな山の温泉宿が雨に煙つてすべての物音を消し
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