町ばかり離れた燒跡の草の中に、芙佐子の着ていたピンク色のワンピースがズタズタに破られて、捨ててあるのを家内が見つけました。どうも、なにか、この暴行された……まあ、なんです、まさかとは思いますが、とにかく、捨てては置けないと思いまして、さつそく昨日、R劇團の方へ參つて見ましたが、ルリさんは昨日の午後――つまり一昨日ですね、頭が痛いから今夜は休ませてくれと言つて歸つたきり、ズット見えないから、こちらでも實は困つている。そう言うのです。實は今日もあちらへ※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]つてみましたが、やつぱり來ておりません。そんなわけで、とにかく、お宅へ伺えば何かわかりはしないかと思いまして、失禮ですがお伺いしたようなわけでございまして――」
 相手がジレジレするほど※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]りくどい言い方で言つている間に、私の目には一昨夜のルリの姿が現われて來、そのピンクのクレープデシンが、引き裂かれて、燒跡の草の上にダラリとひろがつている光景が見えて來た。
「そうですか。……それで、その書置きと言うのは?」
「はあ。それがどうも、意味がよくわかりませんので。……
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