ですが――に追いまわされるようになつてから、再びそんな事は胴忘れしたように消えてしまい、やがて今度は戰鬪が始まる。――これも書けば戰鬪ですけれど、鬪つたのは相手方ばかりのようなもので、僕らはただ叩かれただけと言うのが實状です。飛行機や艦砲でビシビシ來られるのに、こちらでは大事な武器はとつくの昔にこわれてしまつていて、しかた無く、手りう彈とシャベルを抱えて、タコ穴の中に逃げかくれてばかり居ました。その頃です。隊内で變な事件が起きて、久保正三がもうすこしで殺される所を僕が助けてやつたのは。しかし、その事は今書きません。いや、その事だけで無く、その三カ月ばかりの戰鬪のことは、僕は書きたく無いのです。不愉快で。そうです、ただ不愉快なだけなんです。日本人を僕が最初に、そして、もうどうしようも無い位にひどく――そして今でもそれは續いているんですが――憎んだのは、その頃なんです。不愉快で、思い出すのもムカムカします。それに事實、書くことも、ほとんど有りません。僕らは、毎日々々、ガキのように食い物を搜してウロツキ歩き、あとは、ハジからバタバタと殺されて行く戰友を眺め、それが間も無く自分の番になるのを待
前へ 次へ
全388ページ中245ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング