つていただけです。
ところが、その頃、又、あの女の事を思い出しはじめました。そして今度は、なにか、なつかしいような氣持がしました。その女がなつかしいのか、あんな事で男としての最初の事を知つた自分の幼い姿がなつかしいのか、又は、そんな事を自分にさせてくれたMさんがなつかしいのか、ハッキリしませんでした。そのみんなが入れまじつた氣持だつたのかも知れません。とにかく、次ぎの瞬間には死ぬだろうと思いながら、その時のことを思い出しているのです。そのくせ、女の顏はサッパリ浮んで來ないから妙です。
それから終戰になり、やがて僕は歸つて來ました。
そのへんの事、くわしく書くのは、ハブキます。
世の中の調子はまるでメチャメチャになつており、そして僕はウロウロしたあげく、黒田策太郎の厄介になつてゴロツキの生活に入りました。僕があんな生活に入つたのは、入りたいと思つて入つたのでは無く、はじめ金が無くて生活が出來ないで困つていたら、それなら一時の腰かけにでも内の會社に來て見ないかと黒田に言われて、ズルズルにあんなことになつたのです。あんな世界を好いているからではありません。しかし、あんな生活をしてみ
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