のチョットした遊びをするにも、それに全身を打ちこんで無我夢中になつてやれる人でしたが、あの晩の調子と來たら何かギラギラと燃えているような具合で、イライラと、あわて切つて、僕が何か言つても耳にも入れてくれないのです。例の通り酒は入つているようでしたが、フザケたような所は無くなつていました。「もういいじやありませんかMさん! 僕あ、もういいですよ!」と僕が引きとめにかかろうものなら、眼を怒らして、
「グズグズ言うな! 生れて來たからには、人間として飮みほすべき盃だけは、全部飮みほさなきやならんのだ。だまつて、ついて來い!」
 僕をどなりつけるMさんの顏に何かホントに嚴肅と言つてもよいような影が差しているのを僕は見ました。……僕はだまつてくつついて行くしかありませんでした。
 それに、僕の中にも性慾はあるのですし、前にも書いたように、童貞を尊重したりはしていないのですから、女を知るという事に興味を持つていなかつたなどとは言えない。案外心の底の方では、Mさんの言う通りになつて見ようという氣が動いていたのかも知れません。いや、たしかに、動いていました。ウズウズと、どこか自分の身體の隅で、それを望
前へ 次へ
全388ページ中232ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング