んでいたようです。それが性慾であつたか、それとも生きて歸ることを全く考えられない出征を前にして、一つの點を打つ、又は切開手術をすると言つたふうの慾望であつたか、そのどちらであつたか。いずれにせよ、たしかに、僕自身が望んでいたにちがい無い。そうでなければ、いかにMさんが僕の首根つこをつかまえるようにして連れて行つたにしろ、本氣でそれを僕がイヤだつたのならば、ふりもぎつて逃げ出してしまうことができない筈は無かつた。
 それに、もう一つ、Mさんがあんまり一所懸命になつていられるので、それをハズしてしまうのが、なんだかすまない――と言うよりも、Mさんが可哀そうなような氣が、正直のところ、ありました。
 そんなふうな、アヤフヤな氣持のままで連れて歩かれている間に、あちこちで強い酒をずいぶんたくさん飮まされ――それも最初からのMさんの計畫の中に有つたらしいのです――最後に、たしか澁谷あたりの小料理屋を出て、小型のタキシイに、肩を抱かれて掻きのせられた時には、泥醉に近く、自分がどこに居るのやらわからないような状態になつていました。自動車が走り出しても方角など、まるきりわかりません。當時、東京が空襲を
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