な、このヘタをすると一人前の人間になりきれないままで、ジ・エンドだぞ。それでいいのか君あ?」
「……だつて、しかたが無いですから」
「……しかたが無い? しかたが無いんだと? チェッ! チェッ! チェッ!……そうさ、しかたが無いと言やあ、しかたが無い! バカだ! うん、バカヤロウだよ君あ! いやいや、バカヤロウは君じやない、バカは日本だ! おれたちの、この日本だ! チキショウ! だからよ! なぜ、なぜ、それを君は、もつと早く言わない。もつと早く、なぜ俺に言わないんだ、バカあ!」
ガツンとテーブルを叩いて怒り出されたのです。それから、ガブガブと強い酒をあふりながら、ワケのわからぬ事を言つて怒つていられましたが、しばらくすると、今度はボロボロ涙をこぼしていられるのです。
僕は困つてしまつて、どうしてよいかわからず、だまつて腰かけていました。
「……悲しいなあ貴島! 青年は悲しいなあ」
そう言つて、燈火管制のための蔽いをかけた電燈の、薄暗い光の中で、僕をジッと見られました。以前、新聞などで「新劇の團十郎」と言われたという面長で彫りの深い、それこそどんな人物の性格や心理でも、この顏でなら
前へ
次へ
全388ページ中228ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング