いて、
「え! 君あ、すると、童貞かあ?」
 と大聲を出して、びつくりされたので、實は、僕の方がかえつてびつくりしました。
 前にも書いたように、僕は父の手ひとつで嚴格に育てられました。いえ、父は別に僕を嚴格に扱つたのではありません。僕も又、父のやりかたを嚴格だと感じたことは一度もありませんでした。父はむしろ、一人息子の僕を、ただ舐めるようにして可愛がつて育てただけです。ただその父がおそろしく剛直な古武士的な人間だつたために、自然に僕を可愛がる可愛がりかたが、ひとりでに「サムライの子」の育てかたになつたわけです。――ですから、僕が自分の育ちかたが嚴格なものである事に氣附いたのは、十八か十九になつてからでした。
 とにかく、そんなふうに育てられ、乳母だけは知つていますが、自分の身近かに女の人が一人も居ませんでした。親戚には女の人は居ましたが、そんな所とあまり親しく交際もしませんでした。青年になるまでの僕の視野には、ほとんど女の姿は現われなかつたのです。今でも僕は女の人をあまり近くで見るとドギマギしてしまつて、どうしてよいかわからなくなり、自分には理解することのできないものを突きつけられた
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