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こんなふうに言いますと、僕が童貞というものをひどく尊重していたように取られるかも知れません。しかし、ちがいます。僕はかくべつ尊重はしていませんでした。一般的に言つても、そんなに大事なものであるとは思つていなかつたのです。今でも同じです。
だつて、そうではありませんか。誰にしたつて生れたままでいれば、そうなんですもの。「童貞」などという言葉で言うから立派そうに聞えますけど、それはあたりまえの、何でも無い事です。人間も動物です。或る時まで童貞で、それから或る時に童貞でなくなると言う事は、動物のすべてに起きる事で、尊重する必要も輕蔑する必要も無いと思うのです。僕は童貞なんか、どうでもよかつたのです。と言うよりも、それまで、ほとんど自分が童貞であることを意識することさえも無く過して來たと言うのが當つています。ですから、あの晩――と言うのは、僕が出征する三日前の晩です。そしてその次ぎの日の宵の口にMさんは僕をあなたの家の門口まで連れて行かれたのです。つまり、あの前の晩です――Mさんから聞かれるままに僕がまだ女を知らないことを何の氣も無く話しました。そしたらMさんが、いきなり眼をむ
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