た。しかし何か、恥かしくてこれまで言えなかつたのです。今でも恥かしいのですが、當分あなたにはお目にかかれないし、お目にかかろうと思つても出來ない境遇に僕はいるのですから、思い切つて言います。そうしないと、これから先きの僕のことがあなたにわかつていただけないだろうと言うこともあるのです。僕はあなたから笑われ、輕蔑されても、かまいません。しかし、僕のことを、きらいになつてだけは下さいますな。
僕は、或る一人の女を搜しているのです。
その女は、僕が男として生れてはじめて肉體關係を持つた――つまり僕の童貞を與えた女です。現在僕が置かれた境遇を利用してここ當分搜して見ようと思つています。
僕は、その女の名を知りません。はじめから知らないのです。おかしいことだとあなたは思われるでしよう。しかし、名だけではありません。僕はその女の顏も、よくおぼえていないのです。
實に、恥しい、コッケイなミジメな氣持がして、僕は泣きたくなります。しかし事實そうなんです。僕が僕の童貞を與えた女は、どこの誰ともわからない女なのです。……もう少し詳しく書いてみます。
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