囘」、第4水準2−12−11]つて、自分たちの足元を照らした。
 そこに一人の男が倒れていた。白いシャツの胸の、まん中近く、海軍ナイフが突きささつて、見る見る血がシャツの上に擴がつて來る。すぐ前に久保が立つてそれを見おろしていた。たつた今人を刺した人の姿では無い。ポカンとしてただ見物しているように、全然、氣の無い姿だつた。何か妙な錯覺のようなものが私に來た。その次に、その冷然とした久保のうしろ姿に、ホントに恐ろしいものを見たような氣がした。それは、私だけでは無かつたらしい。襲つて來た四五人の男たちも一瞬氣を呑まれたらしく、十秒ばかりの間、身動きする者も無く、もちろん聲は立てず、シンとして手負いの男と久保を見守つて立つていた。あたり一面、しんの闇の燒跡の原に石のような靜けさが落ちて來た。
 しかし次ぎの瞬間に久保一人を取りかこんで、どんな光景が展開するかが、電氣のように私の頭にきらめいた。私は、本能的に前に進み久保に近づいて行つた。
 その時、妙な事が起きた。
 ダダダと坂道を驅けおりて、一人の男が、襲つて來た男たちの背後へ近づき、低い早口で何か言つた。「フケろ!」と言う言葉だけが聞きと
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