すこし醉いがまわり、舌がほぐれて來たようだつた。それを杉田が引き取つて、
「いや、しかし、あたしや、そんな事知らねえもんだから、こいつはと思つてね、さつきは。ヘヘ、すつかり暗くならない内でよかつた。暗くなつてたら、危なかつた。いえさ、あたしの方がさ。だつてテッキリ國友の方の相當の顏だと思いましたあね。そうですぜ、先生! じようだんじや無い。大した氣組みだつたからなあ。君は何だと言われた時にはギックリしたです。ハッハ、まつたくでさあ。いや、そいでも、先生、こんな男ですけど、なんですよ、あたしが附いているからには、貴島の兄きには指一本、絶對にふれさせませんからね。安心なすつて下さい」
 これも嬉しそうだつた。善良な氣質の男らしい。しかも、その道の人間としても相當ねれていて、そんな事を言わしてもキザな所が無い。戰後のグレン隊あがりなどにある薄つぺらさが無い。下司だが、下司なりに、ゴリリとして手ごわい所があるのである。私は、惡い氣持で無く、それに貴島をたずね當てた安心のようなものもあつて、快く醉つた。
 飮んでも、ふだんとまるで變らないのは久保だけだつた。顏を薄赤くして、眼を細くしてニコニコし
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