て來た。それから、急にムラムラッと腹が立つて來た。貴島にも自分にも腹が立つて來た。同時にそれは、貴島に對するものでも自分に對するものでも無かつた。ギラギラするようにはげしい憤怒であつた。……
そうしていながら、私は白状するが、その瞬間に、そして、その瞬間から、貴島勉を愛した。愛したなどという言葉は、おかしな言葉だ。私などがウッカリ使うと、そのトタンに薄つぺらになつてしまう言葉である。しかし、ほかに適當な言葉が無い。愛した。
25[#「25」は縦中横]
間もなく、貴島はオドオドした調子から囘復して、私が訪ねて來たことをシンからうれしそうにしはじめた。
蒼白な顏に薄く血の色をさし、はずかしそうにニコニコ笑いながら、コーヒーを入れてくれたりした。
その横から杉田が、めんくらつて見ている。ふだんの貴島から、あんまり變つてしまつたので、ビックリしているらしい。それに「兄き」の貴島が急にイソイソして、まるで女になつてしまつたように歡待している、この三好という男は一體こりや何だろうという氣持が動いている。彼は、私に對して段々敬意のようなものを拂いはじめた。そこに、何か滑稽
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