おい久保さん、おめえ、何處へ行くんだね?」後ろから男が呼びかけた。
「うん、驛前で食物を買つて來るんだよ。じきだあ」と久保は答えて、並んで歩き始めた私に向つて
「あれは、黒田の子分です」
「黒田の?……黒田というと、横濱のその、貴島君とこの社長なんだろう? それが今頃あんなところで何をしているんだね? 何か、張り番でもしているようだが?」
「社長だなんて? なあに、ゴロツキの親分だな」久保は澄まして私の質問を默殺した。
「僕はゴロツキは嫌いだ」
「どうしてあんな男が、あんな所に立つているの?」
「今の男はズーッと貴島の護衞についている男ですよ」
「護衞? すると……然し貴島君は横濱に居るんだろう?」
「……あんな奴等は卑怯な奴等で、クズですねえ」
 この男と會話をする事は不可能である。彼が他人の問いに答えるのは、答えたいと思つた時だけだ。自分の言いたい時に、言いたいだけをポツリと口に出して、土人の樣に落着いている。この前の時にそれを知つているので私は別に驚かなかつたが、今日はとくにひどいようだ。
「あんな奴等は、世の中に居ない方がよいです」
「佐々君は今居るんだろうか?」
「佐々は三四
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