何を聞いてもわからなかつた。
 しかたなく私はすぐにそこを辭して表へ出た。殘るところは佐々に會つて見る以外にない。私はその足で荻窪へ向つた。今頃佐々が荻窪の防空壕にぼんやりしているとは思えないが、ほかにしようがない。
 荻窪の例の燒跡の近くまで來た時は既に夕方で、西の方に夕燒が薄赤く殘つて、空はまだ明るいが、地上は少し暗くなりかけていた。窪地へのダラダラ坂を私が降りかけ、くずれ殘つた石垣のところを※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]ろうとすると、そこからヒョイと出て來た男が
「おいおい、あんた何處い行くんだ?」と立ちふさがつた。ズボンに、カッターシャツの上に、スェーターを着た若い男で、ざん切り風にバラリと刈りこんだ頭髮の下に、噛みつくような眼をしている。聲の調子も態度も、つとめて押し殺したものだが、何か殺氣のようなものが來た。それを正面から受けて、私はドキンとした。いきなり兇器を突きつけられたように感じたのである。男は、然し兩手をポケットに突込んだまま私の方をうかがつているだけだ。(國友大助の配下の一人…………)と考えたのは、私にいくらかの餘裕が出た時である。
「どこへ行くんだね
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