う言つたものがありましてね。みすみす贋物を掴まされたとわかつても、後になつてそれを言うわけにいかない事がある。そうでなくても、どつちにしろ表沙汰には出來ない事です。そんなこんなを黒田の方ではちやんと見越しているんだ。で、黒田に會つてそれを言つてもヌラリクラリと逃げを打つばかりで、カタがつかない。私んとこの連中がいきり立つて來たんです。そこへ黒田んとこの秘書ということで貴島が割りこんで來て、おかしな事ばかりして話の邪魔をします。ありようは、こうなんです」
「………わかつた。それは貴島が惡い。然しねえ國友君、貴島は何も知りやあしないんだ。あれは君、君達から言えば唯のシロウトで、戰爭から歸つて來てメチャメチャになつているところを、死んだ父親の縁故で黒田の所に一時身を寄せただけでね、君達の事にしたつてほんとの事は何一つ知りやあしないだろう。つまり、復員グレに過ぎん。そいつをあんたがムキになつて相手をするのは、どんなものだろう?」
「あなたと貴島とはどんなお知り合いなんですかねえ?」
「どんなつて君、僕の死んだ友達のMという男の弟子みたいな青年で、僕はじかに附合つた事もあまりないし、詳しい事は何
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