バイがはねた後で半徹夜でやる。その二三日の間、晝間の公演を普通にした上にケイコをするのだから、そうでなくても過勞に落ちているのがクタクタに疲れ、時間も無し、ほとんど全員がガクヤに泊ることになる。すると、約三十人の男女がその六疊一室にギッシリと折り重なるようにして寢る。「ちようど、イワシのカンヅメみたい」だそうである。「着る物がよごれると言つて、スッパダカになつて寢る人もいる」「女優さんもなの?」「もち!」と言い切つて、「そして、ヘンな事がはじまるんです。あんまり疲れると人間は、どうにかなるんでしようか? それもしかし、ふだんからアミになつている人同志なら、私、目をつぶつて知らん顏してる。だけど、時々そうじや無いの。そん時だけ、不意に抱きついたりするの。いやらしいの! ペッペッペッ! お兄さんたちまで、時々そんなことするの。え? ええお兄さんと言うのは文藝部や演出やバンドの方の、つまりエライ人たちの事。そんで、イヤだから、ことわるでしよう? そいでも、大體そんなふうだから、ことわられたからつて、大して怒りもしないの。だけど、あんまりことわつてばかりいると、あいつ異常だ――そう言うの。バカ
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