の佐々は、いつもとはちがつていた。この前、綿貫ルリの裸體寫眞一件の話をおもしろおかしくしやべりまくつた折の、明るい道化た調子など、まるで無い。陰うつとまでは行かないが、頭が何かで一杯になつていてそれ以外の事は受付けないと言つたふうだつた。自制しておさえつけた鋭どさが、顏つきにも言葉の調子にもある。別人のように口數もすくない。急いでもいるようだつた。
「貴島から頼まれて來ました。自分で來たいけど、今のところいつ伺えるかわからないし、それに急ぐと言うんです。僕も社の用事や久保の會社の方のゴタゴタの事なぞで忙しいんで、こちらへ寄つている暇は無いんですけど、どうしても寄つてくれと言うんです。泣くように頼むんです。しかたがないのでお伺いしました」
「どんな事だろう?」
「…………貴島が言つた通りに言います。Mさんのお友達や知人の名まえと住所のリストを、あなたの御存じになつている限り、なるべく詳しく書いてください。とくに、女の人たちの事をくわしく書いてほしい。それが女優さんだつた場合には藝名と本名を同時に、それからハッキリした住所がわからない場合には、だいたいの見當で、どこそこに住んでいるらしいと
前へ 次へ
全388ページ中157ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング