にも積極的な力は生れて來ない。それとは別にもつと根本的に考えて見ることです。つまりです。
 或る戰爭は正しくて、或る戰爭は不正なのですか? 佐々はそうだと言います。僕には、わかりません。僕には、戰爭がホントに否定されるためには(その戰爭がどんな動機からなされた戰爭であつてもです)今後あらゆる戰爭を絶對にしない、しないですむ地盤に立つ以外に無いのではないかと思われます。そんな地盤が現在どこかに在るでしようか? もしそれが無いのに戰爭を否定したとしても、それはただの主觀的な希望に過ぎないのではないでしようか?
 僕の考える事は堂々めぐりに過ぎません。ナンセンスです。僕は人も自分も、共に信ずる事が出來ません。信ずるという力が無くなつてしまつたのです。死んだ父だけを人間として信じているきりで、その他の一切を信ずる能力を失つてしまつたのです。しかたがありません。
 僕は戰場で死んでいればよかつたのです。でなければ、復員して來て、父がセップクした事を知つた時に、すぐに死ねばよかつたのです。死んだ方がよかつたのです。
 それはダメでした。イノチが惜しかつたのでも、死ぬのが怖かつたのでもありません。現
前へ 次へ
全388ページ中151ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング