かにもMさんらしいと、おかしくなります。ですから、僕がイキナリ訪ねて行つたりして、あなたはサゾびつくりなすつたでしよう。サゾ、きちがいじみた奴が現われたと思われたでしよう。すまないと思います。僕は實は甚だ平々凡々の人間なのです。その點おかしくてなりません。
それで僕は自分の自己紹介をします。僕がどんな人間であるか、僕のこれまでのケイレキみたいなものを、ごく簡單に述べます。それには先ず、どうしても僕の父親の事を書かなくてはなりません。父が無くては僕という人間は生れて來ていないのですから。いえ、それは生物學的に親が子を生んだと言う事だけではありません。父という者が居て、僕を育て上げてくれなかつたとしたら、僕という人間はこんなような人間にはなつていなかつたろうと言う意味なんです。誤解しないで下さい。僕は現在の自分を三文の價値もない人間だと思つています。ホントです。蟲ケラみたいに、生きているから生きているだけです。しかし、僕は僕をこんなふうに育て上げてくれた父を尊敬しています。なつかしいと思います。
たしかにムジュンしています。それは知つています。でも、そうなんです。それで父の事から書きま
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