いのです。そうです、あなたが良いのです。ピッタリするのです。好きと言うよりも、良いと言う方が近いです。
 ですから、僕はあなたからMさんの事について教えていただきたい事があるだけで無く、この僕の事をわかつていただきたい氣がするのです。そうです、こんな手紙を書く僕の氣持は主にそのためです。

 又居る場所を變えました。前に居た室から四五町しか離れていない、ゴタゴタしたマアケット街の奧の、電車のガードの下の家です。食べる物やタバコは、黒田の家の者が一日に二度はこんでくれるので不自由はしません。
 今度の室は、中華料理のヘットの匂いがします。そのため時々頭痛がして、食慾がまるで起きません。――
 前の續きを書きます。と言つても、前にどんな事を書いたか、忘れた所もありますが、讀み返して見る氣になりませんので、かまわず、アレコレと書きます。
 この前、東京のRの事務所でお目にかかつた時に氣附いたのですが、それまで僕は僕のことをMさんが生前にあなたに對して話しておいて下さつたものだとばかり思つていたのが、實はMさんは、なんにも僕の事をあなたに話されたことが無いと言うことです。それに氣附きました。い
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