腹の底から信じていられることがわかりました。まるで、戀人のことを語るようにMさんはあなたに就て語られましたのです。
 その事を、僕は一度Mさんに言つてやつたことがあります。するとMさんは怒り出して
「君なんぞに何がわかるか。あんな奴を、俺が好いてたまるか! あれは惡魔みたいな野郎だ」と言つて、僕の額をゲンコツでゴツンとこずかれました。醉つてもいられましたが、惡魔だと言われるのです。そのあなたを、やつぱり、戀人のように大事に思つていられるのです。その二つが、その時分の僕には、何のことやら、よくわかりませんでした。だからMさんが醉つてデタラメを言つていられるのだと思つていました。それがデタラメでは無かつたのだ。兩方ともホントだと言う事が、ちかごろになつて僕にすこしわかつて來たのです。僕は急にあなたに會つてみたくなつたのです。そして先日訪ねて行つたわけなんです。
 どうも、うまく書けません。頭が惡くなつて、ペンの先がチラチラして、順序がうまく立たないのです。
 僕はあなたを、好きになつたらしいのです。好きになつたなんて、失禮な言いようである事は僕も知つていますが、ほかに言いようがチョット無い
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