。よつぽどお暇の時に、極く輕い氣持で讀んでください。

 でも僕は、あなたに何を語ろうとしているのでしよう? それから、なぜ、あなたに對して僕は語らなければならないのでしよう?
 理由が無いことはありません。Mさんの事をもつとくわしく知りたいと言うことです。そしてMさんの友達や知つていられた人達のことを、なるべくたくさん僕は知りたいのです。その譯は、あとで聞いていただきます。とにかく僕には、その必要があるのです。Mさんの友人の方々の中で、Mさんと一番深い所でつながつていた友人の一人が、あなたなんです。その事は生前のMさんが幾度か僕に話されたので、僕は知つているのです。Mさんは、時によつてあなたの事をケナされました。「あの男は馬鹿だ」と言つて、ペッとツバキを吐き出された事だつてあります。又、時によると、あなたを世の中で一番正直で立派な人間のように語られる事もありました。かと思うと、あなたほどエタイの知れない、冷酷な、憎むべき動物は居ないと言つて、憎み切つているように語られました。そして、そんなふうに、いろいろにあなたを語られるあらゆる場合に――憎々しい口調で語られる場合にもです、Mさんが
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