々と生きる。そのために時代と時代との間に陷沒が起きても、それがそうでなければならぬ事ならば、それでよいではないか。誰にその陷沒が埋められるだろう。もし埋め得るものならば、それは、倫理學者や文化主義者たちの努力などでは無くて、青年自身が生命を燃やして生きることで、埋めて行くだろう。……
「そうだそうだ、君たちは、俺なんぞを輕蔑しろ。それでよいのだ。それ位でなければダメだ。しつかりやれ」正直、佐々に對して私はそんな氣がしたのである。
しかし、話の内容には、チョット困つた。
佐々兼武は、話を面白がり過ぎて、誇張している。多少は嘘も交ぜているようだ。しかし大體は嘘では無いらしい。ルリが自分の美しい肉體をさらして裸體寫眞のモデルを始めている。……家を飛び出し、R劇團をやめたとなれば、すぐに生活の事があろうから、金を稼ぐためもあろう。いくら困つても、親戚知友をたよつて行く女では無い。それ位のことはするだろう。
だが、それにしてもすこし度が過ぎる。いつたん、そこまで行つてしまえば、もつと極端な所まで落ちこむのは、紙一枚だ。いや既に現在、佐々は裸體モデルになつている所だけを見て來て、それだけだ
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