かも知れないし、又はNが言うように、花が散つたかも知れません。そんな事はどうでもいいんですよ。どつちだつて大した事ぢや無いんですからね。ただ、そうしてルリの裸かのいろんなポーズを見ながら、貴島のことをフッと思い出したトタンに、キラリとまるで電氣のように僕にわかつた事があります。
「それは、ルリが貴島を戀しているんじやないかという事です。そうです、あの女は貴島を憎んでいます、それは事實のようです。それでも、貴島を戀しているんじやないですかねえ。そう思つたんですよ僕は」

        17[#「17」は縦中横]

 佐々兼武は、自分一人でベラベラとしやべりたて、言うだけ言つてしまうと、たちまち、やつて來た時と同じ唐突さで、歸つてしまつた。
 まるで音を立てて運轉している機械のように早く、鋭どく、そして傍若無人である。忙しいのも忙しいらしい。黨員としての働きもグングンやつているようだし、バクロ雜誌の編集者としても能率をあげているらしい。同時に女と遊んだり酒を呑んだりダンスをしたり――生活を樂しむ、とだけでは足りない。樂しむとか味わおうとか云う考えが起きてくる隙が無い位の急ピッチで毎日を生
前へ 次へ
全388ページ中121ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング