ているため、からだの線が急に大人びて見えた。室の中がパッと一度に明るくなつた。しやべる方はやめないで、まだ五月だと言うのに思いきつた素足の、象牙色のやつを投げ出すようにストンと坐つて、
「先生、ザコ寢というのを、ご存じ?」
「ザコネ?」
「はあ」
「ザコネと言うと、この、人が大勢いつしよに寢る……あれかね?」
「そうよ、男も女もゴチャゴチャに。ですから、そうなんですの。いえ、そりや、いいのよ。ヘイチャラだわ、そんなこと。それだけならばよ。なーんでもありやしないのよ、でしよう?」
「しかし、出しぬけに君、どうしてそんな事を――?」
「ですから、平氣なのよオイラ。ただそいだけならば」
困つて私は貴島勉の方へ目をやつた。貴島はビックリして、先ほどからルリの顏ばかり見つめていたらしい。私と、私の視線を追つたルリの目に逢うと、青白い顏を不意に眞つ赤にした。
「あら!」
はじめて貴島を認めたルリは口の中で言つて目をすえたが、これは別に赤くもならない。「こちらは、貴島君、こちらは綿貫ルリ君」と引き合わせると、貴島の方は口の中で何か言つてモジモジと頭を下げただけだが、ルリの方は坐り直して三つ爪を突
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