むようになつてしまつたんだ。實は、それは、性的なことを好いていて、そいつを待ち望んでいるのだが、自分でも知らん間にひん曲つてしまつて閉塞した状態なんだけどね。世間には間々あることで、實はそれほど珍らしい例じや無い。とにかく、男から手足にさわられたりするのを恐ろしく嫌がるようになつた。樂屋でも、時によると舞臺に出ていても、男優から裸の肩などにさわられると、いきなりキャーッと悲鳴をあげるし、樂屋便所の節穴などを自分の手でセッセとふさぐなんて事をするし、それでも時々、誰か覗いたと言つては眞青になつて便所から飛び出して來る。すべてがそうなんですよ。しまいに、みんな、奴は氣がすこし變だと言う事になつた。事實、こんな奴がどうにかした拍子に變になることがあるんだ。そうなると、面白いことに、これがガラリとあべこべに色氣ちがいになるんですよ。……まあ、そんなふうでとにかく、やつているうちに、ザコネと來た。で、がまん出來なくなつた。そこへ何か、起きたらしい。どつかの男から何かされたらしいんですよ。………もう死んだ方がましだなんて、口走つていましたよ。いや、わしは時々R劇團へ仕事かたがた顏出しをするもんだか
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