だな。生活もある。キリキリ舞いをして下界におつこつた。そいで當人は、そんな自分のことはチットも氣が附いていない。あたりまえだと思つている。落ち着いたもんです。つまり、一人前の女としては完全以上に成熟していながら、自分ではそれをすこしも知らず、性的にはまるつきり無知なんですよ。自分の内に虎を飼いながら、それを知らずにいるんだ。それが、いきなり、R劇團のような所に入つた。エロを賣り物にしているような劇團です。劇團員たちの生活も普通の常識から言やあ、とにかくアケッピロゲたようなもんでね。そういう劇團に永く居る者にとつちや、それが馴れつこになつていて、それがエロでもなんでも無くなつている。それがあたりまえなんだ。ところが、ルリ君には、こいつが、ひどく效いちやつた。出しぬけに蜂の巣に叩きこまれたような工合。カーッと虎が目をさまして、あばれ出したらしいんですよ。しかも困まつたことに、今言つた無知のために、當人、何事が起きたか、まるでわからない。ただ、キリキリ舞いをしているうちに、そいつが、妙な風にこんぐらかつたね。一種の、まあ、性的な閉塞症と言うか、恐迫觀念と言うか、性的なことを恐ろしく嫌つて、憎
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