出て行つたかを察したらしいのです、このままで居れば家に連れ戻されると思つたんですね「貴島さんのこと、三好先生のところへ知らせて下さること、どうぞお願いします」とていねいに頭を下げるので、こちらも「いいです、承知しました」と答えて、ユダンをしていたら、いきなりスッと立つて、パーッと表へ驅け出して行くじやありませんか。びつくりしました。とにかく、此處で逃がしてしまつては、あなたに惡いと思つて、直ぐに僕も追いかけて行つたんです。そいから、追かけゴッコです。いや、逃げ足の早いの早くないのと言つて! こういう事には馴れつこの僕も、あぶなくマカれるところでした。走る、横丁に飛び込む、かくれる、電車に乘る、乘つたかと思うと飛び降りて、バスに乘つている、それを降りたと思うと、同じ所をあちこちとグルグル※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]る、ひどい目に會いました。しかし、そんなに遠くへは行きません。SかYのあたりばかりです。ははあ、そんなに遠い所に住んでいるんじや無いと僕は思つたので、しまいに、見失つたふりをして、一町ぐらいの間を置いて、つけて行きました。當人はマキおえたと思つてすつかり安心したら
前へ 次へ
全388ページ中112ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング