うんです。「俺は俺のファインダアから覗いた眼を疑う位なら、その前に太陽が東から昇ることを疑うよ」と言やあがる。處女か非處女かぐらいがわからなくつて、誰が永年苦勞しているんだ。わしは斯道の大家だとね。「實は俺も、こんだけ美事に成熟した女が、しかも今どき、あんなR劇團なんぞに居た女が、男を知らないなんて、實は俺自身が[#「俺自身が」は底本では「俺自信が」]信じきれなかつた。しかし、俺あファインダアから覗いた眼を信じないわけに行かない」奴さんによると、若い女が成熟し切つて、完全に花が開いて、蜜蜂の來るのを待つている時期にです、戀愛を、非常に強烈純粹な戀愛を感じる。しかも、何かの事情か、障碍があつて、その相手の男に相會うことが出來ないと言う期間――それもたいがい極く短かい期間だそうですがね――その期間に、稀れにこんなふうな皮膚になることがあると言うんです。なんだか、ロマンティックな、あやしげな話だと僕は思いますけどね。
「……え? どうしてそれを僕が見たか? Nが見せてくれたんですよ。彼奴がルリの寫眞を撮る時には、ルリだけを寫場に入れて一人で勝手なポーズをとらせながら、自分は寫場のわきの暗室み
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