。皮膚ですよ。色とキメとツヤと、それから何と言つたらいいかなあ、ネットリしたようなサラリとしたような、全體がツヤ消しになつているようでいて、薄く光つているんです。色は案外に眞白ではありません。小麥色――いや、小麥色ほど濃くは無い、つまりクリーム色に非常に薄くしたオークルを混ぜた、Nは「こんな色は上等のパステル繪具で出せるだけだ」と言つていました。ただし、パステルだと、粉つぽくなつてしまつて、あのシットリとして、光という光をすべて吸收して底の方に沈ましたようなツヤは出ないと言うのです。チエッ、どうも、うまく言えない。どだい、こいつを口の先で言おうとするのが、まちがつているんですよ。自分の目で見る以外にありません。Nの奴は、「まだ男を知らない肌だ」と言うんです。「バカ言うなよ」つて私が笑うと、「いや、まちがい無い。今迄こんだけこの道で苦勞して來た俺の眼に狂いは無い。いや、眼は或いは狂うことがあるかも知れんが、俺がカメラのファインダアから覗いた眼に絶對に狂いは無いよ」と言うんです。奴に言わせると、男でも女でも、たとえば昨夜セキジュアルな營みが有つたか無かつたかと言う所まで、ピタリとわかると言
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