人の本式の「人間寫眞」――Nはその手の寫眞のことを「人間寫眞」と言つているんですよ――も撮つているんじやないかと思います。もちろん、二人を組ませて寫すんではなく、男と女をそれぞれ別々にいろんなポーズをさせて寫しといてモンタージュするらしいんです。この方はルリには秘密らしいですがね。或いはこの方が本職じやないかなと思われるフシがあります。なにしろ非常に賣れるらしいんですよ。當分良い物が撮れると言うので、奴さんホクホクしていました。それに、自分が寫すだけで無く、終戰後ひどくふえたと言うシロウト寫眞家の「藝術寫眞」ですね、あれのモデルとして盜み寫しをさせて高い料金を取ることもしているらしい。結局はテイの良い「覗き」です。
「ルリの身體のすばらしさは、この寫眞だけでは、わかりません。そりや形の良さはこれでもわかるし、これだけでも大したものでしよう? そうでしよう? ヘヘそうなんですよ。先生だつて人間でしよう? 男でしよう? そんなら正直に感心して下さつてもいいじやありませんか。氣取つたつてはじまらんですよ。ね! 形だけでも、こんだけの物です。ところがホントの良さは、肌を見ないじや、わかりません
前へ
次へ
全388ページ中107ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング