んですよ。唯單に、造形的な均整と言うだけから言つても、ほとんど理想に近いんです。千人に一人と言いたいが、日本人の間では一萬人に一人も居るか居ないか、あぶない。そう言うんですよ、Nが。Nと言うのは、繪描きになりそこなつて寫眞屋になつた男でインチキ野郎だけど、女の事はわかるんだ。ひでえ助平でね。殘念ながら、これだけの身體の女あ、平民の血筋にや、チョッと現われて來ないと言うんですねえ。シャクだけど、この代々の大ブルジョアだとか、古くから續いている貴族共が、世の中の美しい女を選り取りにして、子を生ませる。その子が又、美しい男や美しい女を選り取りにしてと言つたふうに――つまり一種の自然淘汰だなあ。それを永い間續けて來た血筋にや、かなわねえと言うんですね。實際、シャクだな。ロシヤだとかフランスの革命の時に、貴族の娘なんかを掴まえて、やつつけちやつたりしたのは、そう言つた事に對する復讐心が、たしかに有るんだな。僕だつて、ルリ君の裸を見た時に、たしかに、そんな風なものを感じたもん。そうだ、復讐心とは言えないけれど、つまりです、何代か前の僕の祖先の何人かの男たちが、自分たちの惚れた美しい女を、貴族やブル
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