ジョアに横取りされて來た、そのウラミ――その男たちのウラミみたいな氣持が、僕の中にムラムラッとね。コンチキショウ! と言う氣がしたなあ。Nの野郎なんぞ、初めてじやないのに、齒を食いしばつて、ヨダレを垂らしているんだ。それほど美しいんですよ。手も足も胴もスラリッとして、まるで、ギリシャ建築の白い圓柱のように、伸びているんです。その割に胴は短かくつて、何ともかんとも言えない丸味を持つているんだ。痩せているように見えるが、痩せてはいないんですよ。スーッと、うねつているんです」
三四日たつて、私を訪ねて來た佐々兼武が、室に通つて坐つたかと思うと、例の人をいくらか嘲弄するような調子と人に取り入るような愛嬌のある調子とを突きまぜた話し方で、時々舌なめずりをしながら、ペラペラとやり出した。話しながら彼がポケットから出して見せてくれたキャビネ版の寫眞が、私の膝の前にあつた。全裸體の女が長椅子に横になつて、おかしな姿勢をしている寫眞で、一種の猥畫の類だが、女は一人だし、引きしまつた均整のとれた身體をしているために、それほど猥せつな感じはしない。よくあつた兵隊慰問用の寫眞を上等にしたような物だつた。女
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