が良いと直ぐに通じるが、通じないとなると、いくら待つても駄目なことが珍らしく無かつた。その日がそれで、何度ダイヤルを※[#「廴+囘」、第4水準2−12−11]しても、受話器の底でブーブーガアガア言うだけ。見かねてその店の店員が代つて呼び出そうとしてくれたが、遂に駄目。あきらめる他に無かつた。それで二三十分も費したろうか、カフエに歸つて行き、表口から入つて隅の方に眼をやると、ルリも佐々も居なくなつている。店の中央の植木のそばに來て立つていた女給が
「通じまして、電話?」
「いや、通じなかつた、ええと、連れは、どうしたろう?」
「あの、もうさつき、お歸りんなりましたけど」
「え? そんな筈は無いんだが。なんか、そいで、言つてなかつた?」
「男の方が、あの、急いで女の方を追いかけるようにして出て行きながら、いずれ、二三日中にお訪ねするからと言つてくれ。そうおつしやつて。……いえ、あなたが電話をかけにおでかけんなつた直ぐ後、二人で何か押し問答をなすつているようでした。そのうち、まるで口喧嘩みたいになつて、それからチョット、シーンとしたと思うと、ガタガタッと音がするもんですから、びつくりして私こ
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