は雪のように白い。それがクッキリと對照をなして、目もさめるようにアザヤカに見える、痛そうな顏はしていない。なにかボーッとして、氣拔がして、そして上氣したような虚ろな表情。……人が變つてしまつたように、おだやかな、とても、とても、やさしい眼つきになつている。……何が起きたのか? わからない。わからないクセに、僕はそれをすこしも不思議に思つていない。ぼくはボンヤリとルリを見おろしていた。何か、出しぬけにルリは女になつている。僕の女に。……なんだつたのだろう、あれは? わからない。なにか、男と女の營み――つまり性交みたいな事が、ルリと僕との間に起きた。妙な話だが、たしかに、それ以外のものでは無い。やさしい、ウットリしたようなルリの顏も、そういう顏だつたように思う。
言つてしまいます。その時僕は、エキスタシイに入つていたのです。……どういうのでしよう? これは、僕がゲスなためでしようか。又は、變態なんでしようか? ほかの人にはこんな事は無いのでしようか?
そうかもわからないと思います。僕は、たしかにゲスで變態なのかもわかりません。そうだとすると、恥かしいのですけど、でも、あの時は、まるで恥かしい氣持などおきませんでした。滿足――異性に接しての、生れてはじめて滿足を味わつたような、はじめて、一人前の男になつたような――シッカリと腹ごたえの有るような、それでいて、何かトテツも無く自由に解放されたような感じがしたのです。僕はゲスだと輕蔑されても變態だと笑われても、かまいません。
ルリも、もしかすると、あの時、僕と同じような感覺を味わつたのかも知れないと思います。
僕はタミ子に眼をやり、フッと出征前夜の闇の中での感覺が、よみがえつて來ました。あれは、この女だつたのか? この女では無かつたのか? わからない。どうでもよい、そんな事は。いいよ、いいよ。……そんな氣がした。
その時、強い匂いが來ました。ムッとする木の葉や草いきれに混つて、しびれるように、僕は不意に、あの晩の女の肌の匂いをクッキリと思い出したような氣がしました。頭がボンヤリして來たのです。……しかし、實は、その匂いは、ルリの身體の匂いだつたのです。そこにウットリとしやがみこんでいるルリの身體からたちのぼつて來る匂いでした。
45[#「45」は縦中横]
……………
それから、僕ら三人は、この
前へ
次へ
全194ページ中191ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング