つて、どこかの病院にでも連れて行かれるのだろうと思つた。
「ちかごろ、變な映畫を」と古賀さんは歩きながら言う「會員制かなんかで見せるのが方々に有るそうね?……あんた、見たことある?」
「ええ、一二度」
古賀さんはニヤリとして僕を振り返つて、
「あれだとかね……そいから、トロイカ。……ハルピンから來たんだつて言うわね、見せ物。フフ! そいつた映畫に寫されちやつたり、そのトロイカ式に使われちやつたり、いろんな目に會つたらしいんだ。ハッキリした事はわからんけどさ。もともと以前から、どうも話の樣子が、戀愛問題でひどい目に會つた結果、ヤケクソになつてしまつたとかで、まるでもう無軌道な事をやりちらして來たらしい。あんたとの事にしたつてそうだろう? いくらなんでも、バアの女給さんと言つたつて、普通の人が、そんな事をオイソレとしやしない。メチャメチャだつたね。それが終戰後、尚ひどくなつて、今度は商賣。そして今言つたような、……いえ、頭がハッキリしていれば、まさかそんな事にもなるまいけど、ボーッとなつちやつてるもんだから、惡い奴等の好き自由になつたんだな。それとも、そんな事するようになつたから、ボンヤリしちやつたか……とにかく――も有るには有るから、いずれは、なんだけどね」
と、その最後の文句の中で、ペラペラとドイツ語で醫學の言葉をはさんで言う。性病の名らしい。
「すると――?」と言う僕に、うなづいて見せてから、古賀さんは、左手の人差指で、自分のコメカミの所でグルリと丸を描いて「……まだホンモノにはなつていない。でも、話は出來ないから、默つていてね。……失語症とでも言うかな」
一歩々々、僕は地獄におりて行く氣持。頭から血が引いて、足がガタガタして、どこを歩いているかわからず。
「それとも、會うの、よして、このまま歸る?」僕の顏が死人のようになつているのだろう、古賀さんは氣の毒そうに言う。「だから、あたしが最初言つたろ?……歸る、このまま?」
「……いえ、會います」
齒を食いしばつているのが自分でもわかる。それをジッと見定めてから、古賀さんは、今度は口をつぐんで、サッサと歩き出した。それきり、その横穴に着くまで一言も言わず。
前にも書いた、僕はどこかの病院に連れて行かれると思つていたので、古賀さんが、間も無く、公園の――あれはどのへんと言えばよいか、とにかく驛からあまり遠く無
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