全體どんことなのか知りたい――つまり性慾みたいなものも有ります。ウソは言いません。しかし同時に、あんな、出征前夜のドサクサの中に、あんな事をした相手に對して、とるべき責任があれば、なんとかして責任をとりたい。――そう言う氣持も少しばかりですが無い事は無いのです。
 いえ、初めの間は、主として前の氣持の方で搜しはじめました。しかし實際に一人二人三人と次ぎ次ぎにいろんな女たちに會つているうちに、人間というもの、女というもの、人間の生活と言うようなものが、僕に今までよりも少しわかつて來ました。そして、いつの間にか、後の氣持――責任がとれれば取りたいという氣持が生れて來たのです。いや、もしかすると、こんな當てのない搜しものをしている自分の行爲そのものが、既に何かのツグナイになるかも知れないと言う氣もします。
 お父さん! どうか僕を守つて下さい。
 …………

        33[#「33」は縦中横]

 それにしても、なんと言うオカシナ事を僕は始めたものであろう。
 あの時の女を搜し出せる可能性はほとんど無いという事は、最初から僕自身が覺悟しながら始めたのだから、それはそれでよい。しかし、Mさんの知り合いだつた女の人たちのリストなど、なんの手がりになるだろうか? ことに、このリストは三好さんに作つてもらつたものだ。だから、ここに書いてある人たちの大部分は、Mさんと三好さんの共通の知り合いの人たちだろう。いかにMさんという人が普通人とはちがつていたとしても、そのような、言わば公式な知人の中から、僕の相手を選み出す道理は無い。案の條、リストを追つて一人二人三人と搜し出し訪ねて行つて見ているうちに、その事が鼻の先に突きつけられるようにハッキリして來た。この事は、すこし考えれば、はじめからわかつていた事なのだ。だのに、ツイもしやと言う希望を持つた。もつとも、僕には、あの女を搜して行く手がかりや據りどころは、これ以外に全く無かつた。今でも無い。すると、探索を打ち切つてしまうか? いや、そんな氣は起きない。現在の僕には、これ以外に、したいと思う事は無い。それに、こうして歩くことが、あの女を搜し出すという目的のためには遂には無駄であつても、何かしら自分のためになるのではないかという氣がして來ている。現に、まだ僅か二三人會つたばかりでも、僕の目は多少今までとはちがつた方向へ開いて來たよ
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