僕の氣持は、がまん出來ないほど強くなつて來たのです。僕は思い切つてあなたを訪ねて行きました。
 それが僕の第一囘の訪問でした。
 そして、僕がその事を言い出さない内に、ルリさんが來て、僕は遂に言い出せなくなりました。しかし、もしルリさんがあの場合來なくても、僕はあの時はそれを言い出せなかつたのかも知れません。と言うのは、僕はあなたを好きになつてしまつたのです。僕はただMさんの事を聞きに行つただけなのに、何と言つてよいか、あなたとMさんとが、どこかしら似ている――いえ、顏や姿で無く、性質と言うか本質と言うか、それも全部ではないけど、一部分がひどく似ている――そんな氣が僕はしました。又、僕がMさんを好いているように、あなたもMさんを未だ好いていられることが、僕に感じられるためかもわかりません。それ以外にもあなたが、われわれ戰爭のためにメチャメチャになつてしまつた青年に對して抱いている氣持――それは愛情とか責任とか言うことよりも、もつと身近かな氣持――が、僕にわかつたのです。ですから、よしんばあの時ルリさんが現われなかつたとしても、そんな、自分の最初の女を搜しているなどと言うことは恥かしくて、あなたに言えなかつただろうと思います。
 とにかく、その晩はその事は言い出せず、ルリさんと連れ立つて歸ることになり、歸り途でルリさんとの間に變な事が起り、それ以來ルリさんから追いかけられ、憎まれ、その上にあなたまでも、つまらない事件の中に引つぱり込むような形になつてしまつて、最後には、とうとう、荻窪での、あんなイヤなゴロツキ同士の斬り合いまで見せてしまうことになりました。その事はホントにすまないと僕思つています。しかし、それは僕の力ではどうにもならなかつたのです。

 ところで、その女のことです。
 僕があなたからMさんが生前知り合つておられた女の人たちのリストをもらつたのも、そのためなのです。と言うのは、あの時の前後の事情や、あの家の樣子や、あの女の僕への接し方などから、あれが普通の商賣女――つまり、そういう事に馴れ切つている女では無かつたような氣がしたのです。その時は僕にはわかりませんでしたけれど、後になつて、いろんな女を相手に遊んだりするようになつて、それがわかつて來たのです。もちろん、そうかと言つて、全くのシロウト娘さんだとは思われません。シロウトの娘さんだとすれば、よつぽど
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