ると、あれで案外住み心地は良いのです。惡どい事や手荒い事ばかりなんですけれど、ちかごろの普通一般の人々の中に間々ある、もつともらしい顏をしてインチキな商賣などをしている連中のような中途半端なイヤラしいウソは無いのです。惡い事は始終やりますが、ハッキリした覺悟をしてやつているので、卑屈さや、ハレンチな所はありません。サバサバとしたものなんです。いえ、ゴロツキをベンゴしているのではありません。むしろ僕はあんな世界はキライです。ベンゴしたい氣は無いのです。ただその當時の、よりどころを全く失つてしまつてポカンとしてしまつた僕には、ただどこよりも氣樂だつたと言つているまでなんです。
 それに、珍らしかつた事も事實です。僕は黒田の組の先頭に立つように、かなり忙しく、次ぎから次ぎと、手荒らなことも相當やりました。そして氣が附いた時には、黒田の配下の中では、顏の古い頭株の連中とは、少しちがつた形で、つまり張出し格の兄き分の一人になつていました。金まわりが良いので惡い遊びなどもおぼえ、酒や女――そうです、女を相手の遊びも相當にやりました。
 そんなことで、その半年ばかり、なんとなく面白いような忙しいような思い切つた生活で、あの晩の女のことは全く思い出さなかつたのです。
 そのうちに、そんな生活にも飽きて來たと言うのか、もともと底の淺い世界だし、本來、性格的にもそんな所に永くなじめないものが僕にあるらしくて、いつからとも無く、つまらなくイヤでしようが無くなつて來たのです。いつたんそうなると、何をしても面白く無く、ムシャクシャしてしようが無い。すると組の仕事はうつちやつてしまう事も多くなるし、しかし一方、荒れようはひどくなつて、喧嘩や人を斬つたり次ぎ次ぎとする。すると、妙なもので、ゴロツキの仲間の内では、逆にハバがきくようになつて、人に立てられたりするんです。それが又、腹が立つ。氣がふさいで、氣がふさいで、そうすると更に、ワケも無いのに人を傷つけたりするんです。それで自分は、益々落ち着かなくなつて行くんです。まるで地獄みたいです。しかも、なぜそうなのか自分にわからないのです。どうすれば、そんな自分で自分の墓穴を掘つて行くような事を止めることが出來るのか、かいもくわからないのです。
 今に氣がちがつてしまうんじやないだろうかと思いました。實際、その頃あちこちの仲間から僕はキチガイだと思われ
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