金だけの問題では無くなつて、臨時工全体の待遇のことで一つ一つ細かい個条の交渉に、入つて来てゐるからね。先き行き風向き如何で、うまく行けばうまく行くし、又、全部がドンデン返しにひつくり返されるかもわからないんだ。いづれにしたつて俺達の方でシツカリしてゐるかどうかで、成り行きも決る。
留吉 それに、俺も、君達の仲間入りをさせてくれないか?
志水 え! ホントかい?
留吉 いや俺あ、なんにも解らねえ人間だし、なんにも別に出来やしない。ホンの仲間の端つこに入れてくれよ。そいだけでいいんだ。
志水 いいとも! 皆に異存の有らう筈が無い! しかし変つたなあ!
留吉 変つた変つたと、さう言ふなよ。いや、俺も、もうボヤボヤはして居れねえ。此処に住着いて、女房子供を抱へて暮すとなりや……。
磯 よかつたねえ! よかつたねえ、香代ちやん!
[#ここから2字下げ]
(不意に堰を切つたやうにワーツと泣き出す香代。……その尾に附いて、より子も泣き出す……間)
[#ここで字下げ終わり]
留吉 なあんだい? ……よろしく頼むよ、志水さん。
志水 いいさ。仲良くやらう。
留吉 あゝ俺あ馬鹿に腹が空いちまつたがなあ。今
前へ 次へ
全93ページ中91ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
三好 十郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング