、早く、おかみさんにして一緒になつておしまひよ! よりちやんの方なら、もう、とうにあんたに首つたけ。いやもう背が立たない。この辺まで! ブクブクブク助けてくれつ!
より 馬鹿! (てれて調理場へ行く)
志水 (笑ひながら四辺を見廻して、カバンやバスケツトを見つけて)どうしたんだい、誰かどつかへ行くのか!
より ……(調理場から)香代ちやんが、遠くへ行くのよ。一時半の汽車で。当分お別れよ。
香代 お香代さんの、お住み替へだい! アハハハ。倍になつた借金を、此の首つ玉へ、おもしに附けて、西の海へドブーン!
志水 さうか。……そいつは、なごり惜しいなあ。身体に気を附けて――。
より (出来たうどんを志水の所へ持つて来ながら)はい。(しみじみとした間。……遠くで列車の音、汽笛)
志水 ……(うどんに箸を附ける)あゝ、うどんを食ふと留公の事を思ひ出すなあ。留公、今頃どうしてゐるかなあ。(ハツとしたより子が、それを言ふなと、しきりに志水に眼顔で知らせる)国へ帰つて百姓やつてゐるかなあ、止しやいいに――。(より子がたまりかねて志水の裾を引つぱつて、香代の方へ注意を向ける)うん?
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